求められて、満たされた

お父さんがすぐに病院に連れていってくれたおかげか、熱はすぐに下がって楽になった。

インフルエンザの菌が完全に消滅するまでは自宅療養という形になったけれど熱が下がるともう倦怠感なども消えていてただの休暇になった。

暇だと色々なことを考えてしまう。

奈生ちゃんにお礼の連絡を入れたが、いつもより返信が遅いような気がした。

そして、その返信内容は少し短くて。

ほんの少しの変化だったけれど、今までの予感からしてほとんど確信に近付いた。
奈生ちゃんには、彼氏がいる。

もしかしたら距離を置こうとしているのかもしれないと、そう考えるとまた不安に陥った。



『木下さん。』



初めて奈生ちゃんを苗字で呼んだ。

奈生ちゃんは驚いたように目を丸くさせた。

そして俺はそれを気にせず、確信を得るための質問を投げかけた。

その答えはyesだった。

素直にショックだった。

初恋は叶わないという言葉はどこかで聞いたことがあった。

でも俺はどんな形でもいいから奈生ちゃんのそばに居たいと思っていた、筈だった。

でも本当は違った。

恋人として奈生ちゃんの隣に居たかった。

無理矢理笑顔を作って、言い訳を作って奈生ちゃんの前から立ち去る。

クリスマスイブの前日。

そして奈生ちゃんはそのまま俺の前から消えてしまった。



クリスマスが終わり、余韻に浸る暇も与えない街からはツリーやイルミネーションが撤去された。

そして、すぐにお正月モードに突入した。

「ユウ、話があるんだ。」

お父さんと朝食を取っていると、そう切り出された。

嫌な予感はした。
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