求められて、満たされた
カウンターの陰に隠れて見えなかったのか。
「もしかして、面接の子?」
そう言いながら私の前に向かってきたのは大学生っぽい男の人だった。
彼は私の前に立つとニコッと笑ってみせる。
「父さんちょっとトイレに篭ってて、ごめんね。」
「あ、いえ。」
「名前は?」
「木下奈生(キノシタナオ)です。」
「奈生ちゃんね!よろしく!」
いきなり下の名前で呼ばれるとは思っておらず、思わず彼の顔を凝視してしまった。
何だ、こいつ。
第一印象はそうだった。
バイトとかは基本苗字呼びだと思ってたし、ましてや初対面でちゃん付けで呼ぶ人なんて初めて見たかもしれない。
私が凝視したせいか不思議そうに彼は首を傾げる。
「おお、面接の子か?すまないすまない。」
店の奥のトイレらしき場所から50代くらいの男性が出てきた。
声からして昨日電話で対応してくれた店長さんだろう。
昨日の電話では声のトーンが低くキツい感じの人かなと思っていたが、すまないと言いながらコチラに会釈してくれた店長はイメージと違って優しそうな人だった。
「ユウ、面接するから少し外で時間潰してて。」
「はーい。」
ユウと呼ばれた彼は私に再び笑顔を向けてから店の外に出て行った。
それを見届けた店長は私をテーブル席に座るように促す。
私が席に座ると正面に店長が座る。
「木下さんだよね。歳は?」
「19歳です。」
「大学?」