求められて、満たされた
「さっきからずっと弾きたいって顔してたよ。」
「やったあ!」
私はそっとアコースティックギターを抱える。
軽く音を鳴らすとやっぱり音の響きが違った。
重心のある深い音だ。
擬音化するとドゥーンって感じのずっしり来るような音。
私は軽めの音よりもどちらかというと重心のある重い音の方が好きだからもろ好みだった。
チューニングをし、コードを繋げて鳴らす。
「ねえ、俊介。弾いてよ。プロの演奏聴きたい!」
「プロって。そういう言い方しなくていいよ。」
そう言いながらもすぐに私の言う通りにしてくれる俊介。
私が指定した曲を何曲か弾き終えるとギターを元の場所に立てかける。
「流石だね。俊介。」
「そう?」
「うん。めっちゃ綺麗な音色だった。」
「奈生に褒められると嬉しいな。」
私は俊介のベッドの上に転がる。
気を遣ってかベッドの端っこに座る俊介。
久々の再会というのもあってか話題は全く尽きなかった。
最近の出来事とかもそうだけど、やっぱり話題の殆どは音楽の事だった。
互いに音楽が好きだからか真剣になって深く語り合った。
気付けば深夜3時を回っていた。
「もうこんな時間じゃん。奈生、眠くない?」