求められて、満たされた
中を見るとおにぎりやサンドイッチ、お菓子と飲み物が入っていた。
どれも私好みのものだった。
「あはは。こんなに食べきれないよ。」
「どうせ朝飯抜いてたんだろ?朝と昼用。学校終わったら連絡ちょうだい。俺今日レコーディングの打ち合わせだけだから迎えに行くよ。ついでに晩飯奢ってあげる。」
「マジ?やったね。」
俊介は毎日のように何かしらの仕事がある。
でもそれだけじゃ食べていけないからとギター講師もやっているらしい。
どれも音楽に携わる事で、それを仕事にしているのはやっぱり凄い。
その中での技術向上のための練習の時間も自分で確保しなければいけない。
本当は忙しいはずなのにこうやって私の心配をして私のために時間を取ってくれる優しい人だ。
今だって、私が学校に行くのを不安に思っているのだろうと気を利かせて来てくれたのだろう。
車の中で俊介がくれたコンビニのおにぎりを一つ食べる。
「ねえ、俊介。」
「ん?」
「もし帰り私が泣いてたらいっぱい慰めてね?」
「当たり前だ。いっぱい慰めるよ。」
「ふふ。ありがとう。」
「今度は1人にしないから。安心して行ってこい。」
「はーい。」
穏やかな時間だった。
自分を偽って本音を隠してこれからただただ人生の終わりを願って生きていくと思っていたからこそこの時間は私にとって甘味だった。
偽らず、本当の自分で居ることが許される時間。
俊介は私にそれをくれる。