求められて、満たされた

イベントが始まる。

クリスマスイブのデートで本当は俊介も普通にデートがしたかっただろうけど、こうやって私の夢を優先して応援してくれる。

その行為を無駄にはしたくなかった。

だから、しっかり目と耳にも焼き付けた。

共演者さんのステージで学べる事は精一杯心に刻み込む。

そして、出番はあっという間にくる。

緊張よりも高揚感があった。

「俊介、行ってくるね。」

「おう、ちゃんと見てるからな。」

司会の方に名前を呼ばれて私はステージに上がった。

ステージに上がって観客を一望すると、更に胸が高鳴った。

目を閉じる。

あのステージを思い出す。

優登さんのお陰で立つことのできた、ステージを。

私はいつも誰かのおかげでステージに立てている。

私1人の力じゃ決してステージに立つことは出来なかった。

この数ヶ月で色々な変化があった。

音楽を1度は辞めて、そして気分転換とお金を稼ぐためにアルバイトを始めた。

そのアルバイト先で優登さんに出会って。

優登さんの優しさに甘えて縋って、気持ちを吐き出して。

そして、優登さんが私をもう一度ステージで歌えるように導いてくれた。
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