求められて、満たされた
だから、決めました。
優登さん。
どうか約束を破ることを許してください。
遠くに行かないと、居なくならないとあなたと交わした約束を破ってしまうことを許してください。
私はアルバイトを辞めます。
音楽にだけ集中したいから。
そしてアルバイトを辞めたら優登さんと連絡を取るのをやめようと思います。
結局、自分勝手になってしまったけれど、私はあなたの気持ちに答えることは出来ないから。
中途半端に繋がっているよりかは良いと思うんです。
「2曲オリジナルの歌を歌います。聴いてください。」
チラッと横目で俊介を見る。
それに気付いた俊介が小さく手を挙げて笑ってくれる。
深呼吸をし、コードを鳴らす。
向けられる視線も歓声も、ここに居る人たちの想いも、優登さんの想いも、俊介の想いも、私の想いも、勝手かもしれないけれど全部私が歌にしよう。
そして、歌おう。
この歌が懺悔の歌なのか、或いは励ましの歌なのか、希望の歌なのか、絶望の歌なのか。
それを決めるのはこの歌を聴いているそれぞれだ。
さよなら。
優登さん。
私をもう一度歌えるようにしてくれてありがとう。
私はあなたを忘れません。
最後の最後まで恩返し出来ずにごめんなさい。
でも、この約束だけは守るよ。
もう1度、あなたに歌を聴かせる。
これだけは唯一果たせる約束だから。
聴いていて。
届くまで歌うから。