1分で読める初恋短編集
15:そして私は、沈黙の繭の中で眠る
「応援するよ」
 親友のマリに言い放った言葉は、自分の胸に突き刺さった。
 同じ人を好きになった、それだけだったのに。
 私はマリになにも言えない。
 だって、彼女が彼のことを本気で好きだって知っていたから。
 自分以外の人に「好きな人がいる」って言うのはとても勇気がいることだと思う。
 それはもしかしたら本人に言うよりも勇気がいって、同時に決意表明になる。
 自分の中にあるふわふわした感情を「好き」の一言で固めて、まっすぐに思いを持つ。
 どれだけそれが尊くて、勇気のいることなのかを、私は痛感した。
 声を上げなければ。
 行動を起こさなければ。
「私もその人が好きなんだよ」
 そう、言わなければ。

 でも、私はそれを言うことはできなかった。
 私の初恋は叶うこともなく、友人の手に渡るだろう。
 それを良しとする自分と、ダメだと思う自分がいて。
 それが、涙となってこぼれた。

 それは残酷なまでに冷たい涙だった。
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