占いお宿II 新たな契りを結ぶ時
「ライラ!!」

突然駆け寄って、後ろから抱きついてくるルーカスにも慣れたもの。彼はこの緩衝地帯のお隣、サンミリガン王国の第一王子。オオカミの獣人であるものの、今はオオカミの姿になることができない。雨に当たると、ドブ色のカエルになってしまうという、なんとも可哀想な呪いという名の魔法を、まだ魔女だった頃のミランダによってかけられてしまっているのが原因だ。

「おはよう、愛しいライラ。俺の番は、今日もなんて愛らしいんだ」

そう言いながら、私の首元に鼻を擦り付けてくる。

「おはよう、ルーカス。くすぐったいし、仕事にならないから離してくれる?」

〝俺の番は働き者だ〟なんて呟きながら髪に口付けして、やっと解放してくれた。

ここではじめて会って以来、ルーカスは私を番に認定した。つまり生涯の伴侶だ。認定したっていうのもよくわからないけれど、直感とでも言うのか……とにかく、彼にしたら私との出会いは運命だったらしい。
獣人は、生涯でたった1人の異性だけを愛する種族だ。彼らによると、一目見ればすぐに番だとわかるようで、決定付ける大きな要因は相手の匂いだという。そして、目が合った瞬間に恋に落ちるらしい。
ルーカスに番認定されてしまった私は、こうして毎日のように彼に纏わりつかれている。

ただ、カエルの呪いが原因でオオカミの姿になれないルーカス。呪いが解けなければ、番の契りを交わすことができないらしい。獣人のいう、番の契りがどういったものかは……藪蛇になりそうだから、聞かないことにした。

とにかく、呪いを解くには、カエル姿の時に、自分を愛してくれる女性自ら口付けされなければならないという。それを無理強いこそしないものの、ちょこちょこ私に求めてくるから困りものだ。


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