占いお宿II 新たな契りを結ぶ時
「ライラ、おはよう。ルーカス、朝からライラに纏わりつくな」

出た!!ルーカスに纏わりつくなと言いつつ、自身も私に近付いて、一筋すくった私の髪に口付けてくる青年。

「おはよう、アルフレッド。そこ、ちょっとどいてね。掃除中だから」

早朝から優しげな笑みを惜しげもなく振りまいているのは、この緩衝地帯を挟んだサンミリガンの隣国、グリージア王国の王太子、アルフレッド・グリージア。
かつて彼は、グリージアの伯爵令嬢セシリア・ローズベリーと、3年もの間婚約していた。が、いざ結婚が目前となったある時、セシリアを妬んだ令嬢の策略によってでっち上げられた、セシリアの裏切りを信じてしまい、彼女の言葉に耳を傾けないまま婚約破棄してしまった。後日、セシリアの無実を知ったアルフレッドは、セシリアとの復縁を求めて緩衝地帯の宿屋までやってきた。

それはいいけれど、ここにセシリアはいない。いるのは外見が似ている私、ライラ・ガーディアン。自分がかつてセシリアと名乗っていたことは、決して認めない。

けれどアルフレッドは、私こそが自分の本当の姿を曝け出せる唯一の女性だと、気持ちを隠すことなく、日々アプローチしてくる。この際、セシリアであろうとライラであろうとかまわないということらしい。

国家間の友好関係を!!と、サンミリガンもグリージアもそれぞれ主張しているというのに、両国の時期国王はプライベートではある意味犬猿の仲だ。

「おい、アルフレッド。俺の番に触るな!!そして、見るな!!」

「ライラはお前のものじゃない」

こんな〝クソガキ〟なやりとりが、毎日のように繰り広げられている。

「2人とも、誇りが立つからあっちに行って」

その扱いのも慣れたもので、かなり雑だ。だって、ここはどこの国にも属さない場所なのだから。王子であろうと王太子であろうと、特別扱いはしない。


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