占いお宿II 新たな契りを結ぶ時
「隣、失礼。2人は横並びになって」

戸惑うヨエルにかまわず、マリアーナの横に押しやると、勝手にその向かいに座ってしまうルーカス。

「ライラは俺の隣な。アルフレッドは……仕方がないな。おまえには王様席を譲ってやる」

誰にも口を挟ませず、あっという間に話をする場を作ってしまった。

「ヨエル、警戒するのはわかるが、できたら落ち着いてくれ。安心材料になるかわからんが、一応、俺の身分を明かしておく」

すっと背筋を伸ばしたルーカスは、一瞬にしてその身分にふさわしい雰囲気を纏った。

「サンミリガン王国の第一王子、ルーカス・サンミリガン。オオカミの獣人だ。ここには俺の番であるライラがいる。だからこの宿に、執務室をかまえている」

少しばかり余分な説明があったけど、こうも堂々と言われると、なぜか〝そうなんだ〟と納得しそうになるから怖い。

「サンミリガンの、王子だと!?」

が、警戒心の強いヨエルは違った。ルーカスの言葉をどう捉えたらいいのか、ヨエルの困惑が手に取るように伝わってくる。
そりゃそうよね。こんな森の奥で、自分は一国の王子だなんて言われて、はいそうですかとは思えない。それに、水晶で見たことから想像するに、彼は王族と呼ばれる人達に対して、良い印象を抱いていないかもしれない。大丈夫だろうか。
そんな私の心配をよそに、続けてアルフレッドも名乗る。

「私は、グリージア王国の王太子、アルフレッド・グリージアだ。同じく、この宿に執務室をかまえている」

「グリージアの、王太子……」

半ば呆然とするヨエルと、彼の服の裾をギュッと握るマリアーナ。

「突然そんなことを言われても、信じられないですよね。すみません。いろいろとお話したいけれど……とりあえず、食事にしませんか?グノーの料理は美味しいですよ」

まずは落ち着いてもらわないと。お腹が満たされれば、心に余裕が持てるはず。〝きちんとお話ししますから〟と、念を押すように伝えれば、渋々な感じはあったもののなんとか頷いてくれた。ただ、このやんごとなき2人が同席することを訝しんでることが、ひしひしと伝わってくるけど。


< 47 / 156 >

この作品をシェア

pagetop