鬼の棲む街


(この番号は私のプライベートだから何か困ったことがあったら掛けて来ても良いわよ)

「ありがとう」

(出られない時はかけ直すから)

「名前、なんて登録すれば良い?」

(大魔神?)

「・・・っ」

(フフ、嘘よ“愛”で良いわ)

「分かった、それと」

(ん?)

「ワンピースと携帯電話ありがとう」

(あ〜それね。携帯電話は壊されていたからお詫びとワンピースは私の好きなブランドなの)

「私も」

(ん?)

「このブランド、好き」

(フフ、気が合いそうね)

「・・・はいっ」

(じゃあ、紅太と双子をよろしくね)

「はい」



携帯電話を耳から離して見つめる


まさか冷鬼が電話をかけてくるなんて思わなくて


芸能人に会った時みたいに意識が高揚している


責められた訳でもなく
応援された訳でもない

ただ、至極真っ当な意見を冷鬼の言葉で伝えてくれた

そのことが嬉しくてソファに座って連絡先を眺める


どうやって私の番号を手に入れたかより


私の全てを知った上で私に決定権をくれたことに胸が熱くなった







そんな



冷鬼が用意してくれた携帯電話には



表示すらされていないGPSや
録画、録音アプリまでダウンロードされていることを


私は知らない





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