鬼の棲む街




「確かに、これまでは何もする気はなかったの
どうせ大学を卒業したら父様の決めた人と結婚する運命だし
自分の身体でさえ自分の自由にはならなかったから」

(貴方の言う“自由”って何をもって自由になるんだろうね?)

「・・・え」

(悪いけど、龍神会に関わる以上、貴方のことは調べさせてもらったわ)

「・・・」

(私が知る限り、貴方は自分の身体を好きに使っていたし親の庇護のもとで好き勝手してきてる
友達はいなかったけど、作る努力はしていない
恋だって出来たけど“どうせ”と諦めていた
貴方はさ・・・たいして不自由でもないのに全部親の所為にしてきただけ
私に言わせれば・・・悲劇のヒロインごっこ?フフ)



冷鬼の言葉が的を射すぎて反論できないばかりか身体中に刺さって身動き出来ない

(あれじゃあ不十分だけど
五十嵐琥白をバッサリ切った潔さは褒めてあげる)

そんなことまで知ってるの?

(私に出来ないことは、ほぼないわ)

私の頭の中までバレているかのような自信たっぷりの言い草にも感心する

(そのプライドの高さも無くさないことね)

会ったこともない冷鬼に丸裸にされているような気分になる

(離れるくらいなら死ねると思える相手を見つけて駆け落ちしてでも逃げ出せば良いのよ
鎖に繋がれて飼われている訳じゃないんでしょ?)

確かに・・・そうだ

(成人したら自分の意思で結婚も出来るのよ
それにね、貴方の縁談がなきゃ立ち行かない会社なんて遅かれ早かれ傾いて無くなるわ)

揺るがないと決めつけていた未来

凝り固まっている頭の中に冷鬼の声がスッと入ってくる

(で、決まったの?こちら側と関わるか切るか)

そんなのとっくに決まっている

「・・・切りたくない」

(フフ、素直にもなれるのね)

「私はいつも素直よ」

(ま、そういうことにしておいてあげるわ)

クスクスと笑う冷鬼はとても“鬼”だとは思えなかった









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