鬼の棲む街
人形



「唯一の繋がりは俺だけだったのに大学を受験するなんて言うから俺もちょっと焦ったけどな」


そう言って膝を突き合わせて座った白は


「少し自由にさせたのがいけなかったな。友達と、あのメールの相手って何者?
調べたけど“大澤紅太”なんて名前、情報屋に聞けば冴えない会社員だって。そんな奴といつ知り合ってた訳?」

やはりあの時の携帯は白の仕業だった

それにしても紅太が冴えない、会社員?

調べるって・・・何


「ツインタワーの東棟に引越したのだって雪の親父さんから連絡来たよストーカー被害に遭ってるらしいってね
知ってたか?親父さん。大学辞めさせて結婚を急ごうとしてたんだぞ?」


「・・・・・・え」


「ま、一生に一度の大冒険だから少し様子をみましょうってことにしてやったんだ」


・・・してやった?

白の話すこと全てが理解に苦しむ


「知らないと思うが親父さんの会社は三代続いた老舗だが、内情はパーティー開いてる場合じゃないくらい悪化してる」


「・・・」


「雪の兄貴は資金提供を申し出た会社の娘と縁談が決まってるし雪はうちに嫁ぐ
急場を凌いでいるつもりか知らないがワンマンの親父さんが変わらない限り、それは急場でしかないんだ」


突き付けられた現実に泣くことすら出来ない

そんな絶望の中、頭を過ったのは愛さんの声だった





『貴方の縁談がなきゃ立ち行かない会社なんて遅かれ早かれ傾いて無くなるわ』




もしかして・・・ううん。


愛さんは知っていたんだ




残酷な答え合わせだった










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