鬼の棲む街


「大丈夫か、雪」


そう言って頭を撫でたあと


『本人達の希望で学生の身ですが結婚を早めることにしました』


父様の話を口にした

長々と続く父様の話も冒頭のそれだけでそれ以降が入ってこない


・・・結婚?本人の希望?って誰の?


目紛しく展開する状況に全く気持ちが追いつかない


「で、今日から同居」


そう言った白は「着替えよう」と私の手を引いた


リビングと繋がるもう一つの扉は広い寝室だった

中央に存在感ありすぎのベッド

その向こう側にある扉が開かれると一斉に照明がついた


「・・・」


ウォークインクローゼットの右側は白の物で埋め尽くされていて

左側にはタグのついた女性物の洋服がズラリと並んでいる


「小雪の親父さんから届いた」


そう言った通り

いつもよく買うブランドの私好みの服


足元のチェストには「これも」と下着が並んでいた


ベッドサイドに置かれた大きな鏡の前には

お気に入りのスキンケア商品


・・・今日から?此処?


一度荷物を取りに帰るとか
逃げ出す理由は摘み取られていて


呆然とする私を


「ベッドには拘ったからさ」


得意顔でベッドに腰掛けた白は繋いだ手を引き寄せた


「キャッ」


「反応が薄過ぎ」


膝の上で横抱きにして


「そんな雪も、偶には良いな」


クスクス笑いながら髪飾りを外していく


全てを床に落とすと首筋に顔を埋めた


「・・・っ!」


チリと痛む首筋
これまで一度も付けなかったそれが

白の所有印のように何度も繰り返し付けられる


「あれから、誰かに抱かれた?」


胸元から聞こえる声に首を振る


「今日の為にずっと我慢してきたけど
もう俺以外に抱かれるのは許さないから」


吐き出される低い声と同時にドレスが脱がされた





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