鬼の棲む街
紅太はエスパーだろうか?
頭の中を見透かされた居心地の悪さに少し口を尖らせた
そんな私をフッと笑って頭を撫でた紅太は
不意に顔を上げた
遠くを見つめるその視線は鋭く細められて
何事かとそれを追うように顔を上げれば
女性の肩を抱く巧が見えた
いつか見た人とは違う派手目の人と笑顔で見つめ合いながら
繁華街の入り口に建つホテルに入って行った
夜の繁華街の喧騒
紅太の視線を追わなければ知らなかった一コマ
「あぁ、巧さん。最近あの子も、ですね」
いつの間に車から降りてきたのか
紅太の側近が告げる事実に頭を過ぎったのは愛の顔だった
あの子“も”ってことは
お気に入りは複数いるのだろう
どの場面も愛が敢えて巧を指名したのは女性の扱いに慣れているからだろう
私の負担にならないように配慮してくれた心遣いにやっと気付けた