鬼の棲む街


「此処だ」


ハッとして視線を向けると
そこは・・・真っ白なビルだった


豪華なエントランスを抜けると鏡張りのエレベーターに乗り込んだ


着いたフロアには重厚な扉が一つ

その扉の前には厳ついさんが二人


Club rouge foncé



ClubといってもDragonのような学生でも入れそうな雰囲気でないことは分かる


綺麗にお辞儀をした厳ついさんが開いた扉の中へと

紅太は纏う空気を更に冷やして入った


「連れてこいっ」


途端に耳に飛び込んで来た声は聞き覚えのあるもの


・・・白?


瞬時に蘇る恐怖で身体が震え出した

そんな私に気付いた紅太は
より密着するように腰に手を回す


それでも不安で紅太の腰に手を回した


そうしている内にも白の怒鳴り声は続いていて


黒服に誘導されてスキップフロアの一番奥の席に着くと髪を振り乱して叫び続けている白がいた


近くに尋もいる


「・・・っ」


思わず息を飲んだのは

この店の女の子なのか、泣きじゃくる女の子の手と白の手が手錠で繋がれていたから


・・・どういうこと?


呆然とする私に気付いた白は血相を変えて近付こうとして

繋がれた手錠が引かれたことで


「キャァァァァァ」


女の子の悲鳴が上がって立ち止まった


「雪、どういうことだ!」


「・・・っ」


「婚約破棄なんて認めないからな!」


「・・・」


あまりの迫力に紅太の背中側に逃げる




どうして此処に白が居るのか

カタカタと震える身体の所為か思考さえも曖昧になって脚に踏ん張りがきかなくなった



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