鬼の棲む街
オデコに触れる冷たい何かに重い目蓋を開くと見知らぬ男性が顔を覗きこんでいた
「・・・っ」
「・・・気がついたね」
驚きで瞬きさえ忘れた私に聞こえた柔らかな低い声は、何故だか優しく聞こえて
「・・・どこ、ですか?」
頭に浮かんだそれが口から出た
「あ、あぁ、此処は俺の家?」
何故疑問系?
混乱する頭だけど・・・
それもどうでも良いと思えたのは身体に力が入らないから
「お嬢さん高熱で此処に運ばれてね」
そう始まった男性の話に土砂降りの日が蘇った
あの三人からは逃れられたけれど、てっきり次の男に捕らえられたと思っていた
彼はあのまま私を此処へ運んでくれたということになる
「着替えはさせたけど・・・なるべく見ない努力はしたからね」
・・・てことは見たのね
「・・・」
ずぶ濡れで高熱の私を預かってくれのだ
この際、その他は我慢する
「まだ少し熱があるから動けるようになるまでは此処に居ると良いよ」
「・・・お、世話になります」
「家に連絡する?荷物は乾かすために
そこに並べてあるから、携帯も使えると思うけど」
そう言って振り返った男性の背後には新聞とタオルの上に並べられたバッグの中身が見えた
「今日は何日ですか?」
「あ〜、君が連れて来られた日から三日は経ってるよ?」
「・・・へ?」