鬼の棲む街



中谷さんは愛からの通達と紅太の配慮で厳ついさん達とも打ち解けていて厨房も使いこなしているみたい


「基本的には小雪の付き人って立場だから
小雪に絡むことしかさせないってのが愛との契約だそうだ」


「私のこと?」


「身の回りのこと全部」


「じゃあ出掛けるのも?」


「遠巻きに護衛はつくが、それも自由だ」


いくら紗香は友達でも此処へは入っては来られないしいつも一緒には居られない

だから、素直に嬉しい


ポケットから携帯電話を取り出して愛にお礼のメッセージを送る


[優しい姉でしょ]


すぐに返ってきた内容に頬を緩ませた


それにしても


「此処じゃなきゃダメなの?」


大広間の上座に座らされたから居心地悪い
しかも何故か厳ついさん達全員集合みたいで多くの視線が向けられていることに俯きたくなる


「他の選択肢は俺の膝の上だけだが」


それを躱す紅太にムカつく


「・・・此処で良いわ」


「そりゃ残念」


笑っているのに怖い厳ついさん達は
そのやり取りを微笑ましそうに見ている


そこでスッと立ち上がった紅太は


「田嶋の娘で俺の女だ」


簡潔明瞭な紹介をした

「・・・え」

それを座って見ているほど心臓はつよくなくて
私も慌てて立ち上がると頭を下げる


「「「「「承知」」」」」


厳ついさん達も同じように立ち上がって頭を下げた


「チッ」
「ざ〜んねんっ」


そこに現れたのは双子だった


二人は紅太の隣に腰を下ろすと深いため息を吐き出した


「いつからだよ」


ひと睨みした尋の悔しそうな声に


「クッ、さっき」


答えたのは紅太


「子猫ちゃんは気まぐれ」


緩い巧には


「首輪は必要だろ」


紅太は意味不明な答え方をした


「悔しいが変わらず俺達も護っていく」


「目を離すとす〜ぐ居なくなっちゃうからねぇ」


「あぁ、頼む」


そこで会話は終わって
珍しくお昼に一堂に会した大広間は


実は召集があったことを


私は知らない










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