鬼の棲む街


紅太の寝室に繋がるのは部屋ほどあるクローゼット

そこに私のものは並んでいた

その一角に可愛らしいドレッサーがあって化粧品も揃っていた


「これを選んだのは愛だ」


赤いスツールに座った私の頭を撫でた紅太は隣で待ってると出て行った


「幸せ」


幸せ過ぎて緩む頬にチークをのせた





・・・






「「いらっしゃいませ」」


特に必要なものもないと思いながら車に乗り込んで着いたのは宝飾店


ジュエリーショップなんて軽いものじゃなくて
入り口にガードマンまで立っている重厚な建物に臆することなく入る紅太


愛の居る西の街にも店舗があるという老舗の個室に通された


ソファに座って紅太に肩を抱かれた私の前に綺麗な指輪が並べられた


「小雪は何もつけてないな」


ピアス以外は基本なにもつけていない


「自分で買いたいほどの思い入れもなかったから」


「そうか」


どこか上機嫌の紅太は身を乗り出してひとつずつ私の左手中指に通していく


その中のひとつに椿の花を模したルビーの指輪があった


「これ、可愛い」


「そうだな」


一瞬で気に入ったそれは


「こちらは愛様からのご依頼でお作りした特別な物です」


愛からのサプライズだった

私が選ばなかったらどうなったんだろう

心配せずとも思惑に乗ったけれど


そして・・・


「こちらも」


同じ椿のネックレスまで並べられ

結局、カードを使うという目的で出かけながら

渡されたカードは出すこともなく紅太が全て支払った



「サァ、次行くぞ」



紅太との初めてのデートは側近が荷物持ちで汗だくになるほど買い物を続け最後は森乃家に行き着いた









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