鬼の棲む街



ーーーーー翌朝



目が覚めると大きなベッドに一人だった


隣の居間にも紅太の姿はなくて
ひとまずシャワーを浴びる


「10時だから流石に起きてるか」


着替えてメイクも済ませるとリビングへと向かった


「起きたか」
「遅せぇ」
「寝起きも美人だね〜」


そこには鬼達が勢揃いしていて側近の連絡で中谷さんが朝食を運んできてくれた


隣に座って髪に触れている紅太は


「それなんだ」


スープボウルを興味深げに覗き込む


「トマトと卵のコンソメスープ」


それだけ答えると


「お酒を召し上がった翌日はこのスープが定番でした」


中谷さんが補足する


「クッ、未成年なのにか?」


「文句は森乃家の女将に言いなさいよ」


吹き出す紅太をひと睨みした


「お〜怖いねぇ、子猫ちゃん」


いつの間に座ったのか向かい側で微笑む巧と尋


結局、余程スープが気になったのか鬼達まで飲むことになり厨房から鍋が持ち込まれることになった


「美味いな」

「「美味い」」


「でしょう?」


自分が作った訳でもないのに褒められると嬉しくなった


「ところで、今日は出掛けるから」


「ん?」


「杉田さんに会いに行きたいの」


ひと月近く顔を見ていないしアルバイトのことも話しておきたい


「あぁ、行ってくると良い」


「一人で平気なのかよ」


「俺、ついて行こ〜か?」


「中谷さんと行くから平気」


過保護な双子を切り捨ててコーヒーを持ってソファに移動した


・・・なんなの


凄く胸がモヤモヤする


朝起きた時に一人だったことも
出掛けるのにすんなりOKが出たことも

スープも飲み終わっているはずなのに
ソファに移動した私を追って来ないことも


全部モヤモヤする











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