鬼の棲む街



「おっかえり〜」
「遅せぇ」



桜の木のベンチに座って待っていた双子はエレベーターの扉が開いた途端に口を開いた


「フフ、ただいま」


手を繋いだまま近寄る


「小雪が家出した所為で南《こっち》は大変だったんだからな」


勘弁してくれと呆れた視線を寄越す尋


「俺はそれ程でもなかったけどね〜」


クスクスと笑う巧


「あら、私の所為なの?家出って、送って貰っても有効?」


私が居ないくらいでこの街が何かあるとは思えない


「小雪を送ってから赤鬼《あかおに》のご機嫌が悪い悪い」


態と“あかおに”と揶揄う尋


「“あかおに”って、フフ」


そうなの?と紅太を見上げてみれば


「んな訳ねぇ」
プイと顔を背けた


「二十七にもなって子供かよ」


尋は相当根に持っているらしくブツブツ文句が止まらない


「今度、頭を置き去りにしたら承知しねぇからな」


最後にそう言って立ち上がった尋は


「じゃあな」と私の頭をクシャっと撫でて
ご機嫌な様子の巧と一緒に帰って行った


笑っていたから終わりで良いのかな?


「あぁ」


「“あぁ”じゃないわよっ
紅太のとばっちりが私に来たのよ?これは大問題じゃない?」


頬が緩みそうになるのを必死で堪えたのに


「ま、だからって十倍はたいして減らねぇけどな」


企みはバレていたようで
酷く嬉しそうな紅太に手を引かれて重厚な門を入った







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