鬼の棲む街


南でも中谷さんに食事を作ってもらえば紅太の部屋で二人きりの食事が出来るんじゃないだろうか


そう考えた私に


「二ノ組は陰なのよ・・・だから組員は“個”を重んじる
三ノ組とは仕組みが違うの」


バレている頭の中を愛は理解できるまで噛み砕いて話してくれた


盾として複数単位のチームが連隊を作る三ノ組は


単なる食事も日々繋がりを深める意味を持つという


「ごめん、ね?」


「謝らなくて良い。知らなくて当然だ」


鬼達は私に変わらず優しくて甘い


「そろそろ帰るか?」


だからあの巣窟へ戻りたいと逃げ出した割に切り替えも早くて


「うん」


頷いて見せれば


「・・・反則」


よく分からない返しとともにギュッと抱きしめられた


「はいはいご馳走様」


呆れたような声をあげた愛も一平さんも笑っていて


ジワリと温かさの広がった胸が苦しくて

紅太の背中に手を回して密着する


益々揶揄される中聞こえたのは


「覚えてるよな」


紅太の甘い声で


「・・・フフ」


それもなんだか心地よくて笑ってしまった


「十倍だな」


「・・・へ?」


あぁ、神様
まだ十八歳なんです、私


「知ってる」


・・・いや、神様だってば


「俺かと思ってた」


どうやら無慈悲なはずの赤鬼は
どんでもない勘違い野郎のようです


「・・・チッ」


「ヒッ」







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