鬼の棲む街



「とんだ言いがかりじゃない?
彼氏に別れを切り出されてそれを石山さんの所為にするなんて性格悪すぎて話になんない」


田川さんの正論に向かいに立つ女の視線が彷徨う


「な、なによっ、石山小雪さえいなければ康二は別れなんて言わないはずだもん」


一気に形勢逆転で押され気味の女は泣き出しそうになっている


「石山さんのことは口実で
なんでもかんでも人の所為にするようなアンタに愛想を尽かしただけじゃないの?」


ダメ押しのように続ける田川さんに遂に女は黙ってしまった


「兎に角、アンタと彼氏の問題に石山さんを巻き込むんじゃないわよ
石山さん。こんな人、放って行こう」


田川さんは気が済んだのかニッコリ微笑んで手を繋いでくれた


「・・・っ」


女の子と手を繋ぐのなんて初めてのことに戸惑う



こんなの・・・知らない


だって



これまで私の味方をしてくれる人が現れたことはなかった

どうせ今回も同じだと簡単に諦めようとした


そんな自分が情けなくて


何故だか・・・無性に泣きたくなった




「・・・え、石山さんっわわっ」




突然泣き出した私を見て大慌てになる田川さん


それが


嬉しくて



これまで我慢してきた数年分が崩壊したかのように感情が溢れてきた















< 24 / 205 >

この作品をシェア

pagetop