鬼の棲む街


タイミング良く窓際の席が空いてそこに向かい合わせで腰掛けた

泣き続けている私を置き去りに田川さんはランチプレートを取りに行ったようで


暫くすると「お待たせ〜」と両手にプレートを持って帰ってきた


どうやら私の分も取って来てくれたようだ


「選ぶの難しいから日替わりね」


田川さんは「ほら」とプレートを置いてくれた


「あ、りが、と」


落ち着いてきたとは言え嗚咽の残る所為で途切れる喋りに田川さんは心配そうに私を見ていて


「ごめん、ね?」


気がつけばタオルハンカチを口に当てまま謝っていた


「謝らないで?石山さん何も悪くないじゃない
あの人とんだ言いがかりだったよね」


眉を下げて私を気遣いながら慰めてくれる彼女は優しすぎる


初めて他人の優しさに触れて

それが

どれだけむず痒いか

どれほど嬉しいかを噛み締める

そして・・・それは

庇ってくれた田川さんに
私のことを知って欲しい

そんな気持ちも生んだ



「あのね・・・」


食べながら聞いて欲しいと田川さんを見た


そこから・・・栄星学園でのことを少しずつ話した


彼女は時折、眉を下げたり上げたり

「なにそれ」と呆れたりしながら私の話を真剣に聞いてくれた


「石山さんは強いね」

「誰も味方につかないって許せない」

「強くて美人って最強じゃない?」


話の間に挟まれる彼女の反応は私を疑っていなくて

何故だかまた・・・泣きたくなった


「てか、泣きすぎだよね」

「美人が泣くと絵になるよね」

「明日はブスになるかもよ」


笑って涙を拭いてくれる田川さんは
やっぱり良い人だと嬉しくなった











< 25 / 205 >

この作品をシェア

pagetop