鬼の棲む街



結局、キッチン用品が並んだフロアで一目惚れしたランチマットを二枚購入した

そこから一階ずつフロアを降りて
お喋りしながらウインドウショッピングをして歩き回った結果


「お腹すいたぁ」


紗香が一番に根を上げた


「食べに行く?」


どうせ夜は外食だからと誘ってみれば


「良いねぇ」と簡単に乗っかった


「何食べる?」


普段行ってる店を紹介しようとしたら


「タウン誌に載ってたイタリアンが美味しそうでね。行ってみたかったんだぁ
えっと名前はCasa forestale《カーサ フォレスターレ》」


紗香に先を越された


「じゃあ、そこ行ってみよう」


イタリアンと聞いてテンションが上がったから一瞬で店が決まった


「席、予約してみる」


紗香は携帯電話をバッグから取り出して指を滑らせること一分


「予約完了」


あっという間に席まで押さえた

これから行く店なら予約も要らないんじゃないかと思った私に


「ネット予約するとデザートがグレードアップするって載ってた」


紗香はキラキラの笑顔でそう言った


「凄い」


地図アプリのガイドを見ながら比較的近くにあるその店の途中に杉田さんの喫茶店があることが分かった


「ねぇ、途中少しだけ待っててくれる?」


「ん?」


「これ、渡したい人がそのカーサなんとかまでの途中にいるの」


「カーサなんとかって。フフ。良いよ」











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