鬼の棲む街



「偵察ってなに?」


苛立ちがそのまま声になって思っているより低い声が出た

それに反応したのは森本尋で


「あ゛?んなもんそのままじゃねぇか」


なんだろうこの理不尽な物言いは

そう思ったのが切り替えになったのか、あんなに力の入っていた身体は楽になり憑き物が落ちたみたいに気持ちも楽になった


「馬鹿馬鹿しい」


「あ゛?」


「くだらない」


「あ゛?」


「帰るわ」


サッと立ち上がれば目の前の双子も同じように立ち上がった


「逃げんじゃねぇ」


「は?」


「あんた馬鹿なの?」


「あ゛?」


「てか、なにか言えば『あ゛?』しか返さないけどやっぱ馬鹿よね?」


「なんだと?」


「あんた達が私の何を聞いたか知らないけどただの小娘で一般人よ
それをなに?偵察?最近のヤクザは一般人にも絡み始めた訳?脳みそお花畑なんじゃない?」


苛立ちがそのまま口から飛び出して止まらない

もちろん煽るなんて生優しくなくて思い切り喧嘩越しだ

私の命もここまでかもしれない


それでも負けたくなくて腕を組んで真っ直ぐ睨みあげる


「迷惑なんだけど!
疑ってるなら尚更良い気分で飲んでる時に態々絡んでこないでよ。
下に溢れてる脳みそ軽そうな女と私を一緒にしないでっ!ほんと、迷惑っ」



ダメ押しのように言葉を重ねれば


「テメェ」


獰猛な獣が牙を剥いた


刹那


ガチャ

大きく扉が開いた


一触即発の場面に水を差したのは


「何してる」


「「・・・っ」」


不機嫌に眉を顰めた赤鬼だった





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