鬼の棲む街
距離
「・・・っ」
朝から定期的に鳴る携帯電話に何度か挫けそうになる気分をどうにか保たせる
なるべく見なくて良いように音源を寝室に置いたというのに
テレビもないこの家ではBGMになるものがないようで短い通知音にも反応してしまう
「なに?」
洗濯と掃除を済ませてもまだ鳴っているそれに我慢も限界
「・・・っ」
諦めて手に取った携帯電話は普段使うことのないメールとメッセージアプリの通知が二桁になっていた
メッセージアプリを開くと届いていたのは父様と紗香。大多数は白からだった
それを開くには勇気が必要で父様と紗香を先に開いて返事をする
二人は想像していた通りの内容で少しホッとする
そして・・・
白からは
[なにしてる]
[次はいつ会える]
[GW旅行行かないか?]
[明日も会いたいから途中で待ち合わせしようか]
[どうした]
[なにしてる]
[返事待ってる]
[待ってる]
スクロールするだけで気分が落ちる内容で
[飲みに行ってたから返事出来なかった]
そう送るとすぐ
[全く携帯見ない訳ないよね?]
浮気を疑う彼女のような返しがきた
「ハァ」
同志だと思っていた白を、まさか疎ましく思う日が来るなんて
唯一の気持ちの拠り所だっただけにダメージが大き過ぎて白を【通知オフ】にしてしまった
「・・・ごめん」
一ヶ月前には考えもしなかった状況に奥歯を噛み締めるしか出来なかった