鬼の棲む街



「あぁ」


離れて行く熱にどこかホッとした


シートに下ろされた身体は触れているだけなのに過剰に反応し乱れたままの呼吸に熱が生まれる


自分の身体を自分でコントロールできなくて
えも言われぬ不安に駆られる


・・・お願い、強く抱きしめて


両手で身体を抱きしめて唇を噛んだ瞬間


「助けに来たぜぇ、子猫ちゃん」


巧の声が聞こえた


「・・・た、く、みっ」


「大丈夫か」


「んっ・・・ぁ、ふっ」


噛んでいたはずの唇は巧の指が解放した


「仇は打っといたから」


耳元で囁かれただけで崩れ落ちそうになる身体は

巧の腕の中にスッポリと収まった


尋とは違うスパイシーな香り

その匂いにも熱が上がる

間近に見える巧の顔は
いつもとは違って真剣で


「俺が、楽にしてやる」


その言葉と同時に唇が塞がれた


「んんっ」


「口、開けろ」


従順な猫のように
甘い声に溺れていく




歯列をなぞり割って入る舌を
夢中で追いかける


支えられた身体とは別に
肌を滑る長い指に

もっととお強請りを繰り返す肌は指を追って跳ねた


尋の上着が足元に落とされると
弾かれたボタンの所為で意味を成さないブラウスと
下着をつけただけの肌が露わになった


「綺麗だ、小雪」


こんな時だけ名前を呼ぶなんて狡い


「綺麗だ」そう言って口付ける巧の唇が


首筋から胸元へと移り


触れられたいと突き出した胸を解放するように背中に回った手がブラのホックを外した











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