鬼の棲む街







日曜日は嫌い












見慣れたダイニングルームに
週に一度の違和感


何度繰り返しても慣れないのは
この人達と相容れない私の想いだけかもしれない








・・・




「小雪、荷物が入るのはいつだ」


この家の主である父様がピンと張り詰めた空気を壊した


「・・・週末、土曜日です」


口の中に入れたばかりのオレンジを
急いで咀嚼して飲み込んで
ナプキンを口に当てて答えれば


「分かっていると思うが・・・」


耳障りの悪い低い声は
幼い頃から聞かされた言葉を
嫌味なくらい寸分違わず吐き出した


「大学を卒業したら結婚だ
だから四年は好きに羽を伸ばせばいい
ただ・・・ハメを外し過ぎるな
結婚相手を幻滅させることになりかねない」


「分かっています」


父様とのやり取りを
食後のコーヒーを飲みながら聞き入っている母様と兄様は

同じように返す私に視線を向けながら頷いていた




・・・あぁ、こんな日は
誰かの肌に触れていたい


テーブルの下でギュッと握った両手は
此処に居る間中そのままだった





・・・




「あー」


力を無くして後方に倒れると
ポフッと身体を受け止めるベッド


・・・このベッドは持って行けないなぁ


残念な気持ちを込めて見慣れた天井を眺める




先月高校を卒業した私は遂に
幼稚園から大学まで約束された道を外れた


そして・・・


二つも県を跨いだ先の大学へ通う



それは・・・



最後の抵抗か



それとも・・・


一度も持たずに来た感情を
無意識のうちに探しているのかもしれない



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