鬼の棲む街
「あの女の真似してって言われたけど何言ってるか意味不明だった」
「あぁ、それは愛のことだ」
・・・冷鬼のことだったんだ
「二年前に南の街で愛と会ったことがあったんだけど
いつもDragonに出入りしてるから勘違いしてたんだろうな
我が物顔で幹部会にやって来て愛の逆鱗に触れてつまみ出されてからDragonは出禁になったんだ」
「どちらかと付き合っている口振りだったけど」
「それはない」
「出禁になってからの杏奈の事は俺達も知らなかった
今回、杏奈に唆されて小雪を攫ったのは隣の県の半グレで実態が掴めなかった野郎だった」
「隣の県まで連れて行かれてたのね」
「県境だったが、隣県だ」
「売られることになってたのよ?」
「みたいだな、あの野郎
小雪を連れ去った奴も触れた奴も再起不能にしてやったから許せ」
「再起不能?」
「子猫ちゃんは知らなくて良いよん」
ここだけ緩い喋りになった巧は笑顔なのに目が笑ってない
「で、どうやって私を見つけたの?」
それが一番知りたかったこと
「携帯電話だって新しくしてたし誘拐されたなんて知らなかったでしょ?」
「愛だ」
「南の街は愛の監視下に置かれているんだ
だから小雪のことも全部知ってる
異変に気付いてからは首謀者から潜伏場所、半グレから小雪を売りつけようとした相手まで全て調べ上げていたんだ」
「・・・」
「南は安全な街だ。今回のコレは始末をせずに放置した俺達の罪だ。怖い思いをさせて悪かった。
責任持って俺達が日々護衛するし、もう二度とこんなことはないと誓う」
尋は力強くそう言うと深々と頭を下げた