鬼の棲む街
「ねぇ」
「「ん?」」
「私って愛さんに似てるの?」
「ん?似てない、ぞ?」
「そ〜だねぇ、似てないよ?」
「愛さんの真似して双子に近づいたのかって聞かれたの」
「杏奈か・・・」
「髪型が似てたから私に声かけたの?」
「んな訳ないだろ。そんな外見で判断してると思うのか?」
「思うわよ?だって・・・私がドブスなら声を掛けなかったでしょ?」
「尋が言ったのはそういう意味じゃないよ
愛と似てるかどうかで声はかけないってこと」
「実は、クラブに来てることは分かってたから偶然じゃない」
「どういうこと?」
「頭、紅太さんが子猫ちゃんを助けただろ?それも二回も」
「うん」
「紅太さんはあんな風に女を助けたり、ましてや杉田に預けて看病させるとか誰かを思い遣るなんてこと南の街に来てからは一切なかったんだ
だから何かあるんじゃないかって色々網を張り巡らせてたらあの日、水野から連絡が入ったんだ」
「水野?」
「Dragonのバーテンダー」
「じゃあ、あの日バーテンダーが会員証を出してきたことも巧が声をかけてきたのも計画的犯行ってこと?」
「人聞きが悪いじゃねぇのよ」
「紅太さんが乱入してきたのは想定外
あれは愛から小雪を連れ込んだ俺達のことを聞いたんだと思う」
「愛さんってほんと何者?私の中では大魔神なんだけど」
「なんだそれ」
「子猫ちゃんの発想には驚かされるわ
愛は龍神会の全てを掌握する陰で大魔神でもなんでもない。強くて美しくて俺達の唯一無二」
そう言った巧に合わせるように二人は同じ動作で薬指に口付けた