コインの約束

えっと。なんだっけ?そう、お蕎麦屋さんがね、あってね、和真。

「か、ずま?」

和真から顔を離した高柳さんが笑っていて。

「ふっ。あなたたちなんて壊れたらいいのよ」

私はこの場にいられなくって。二人の顔を見たくなくって。

走って逃げた。とにかく混乱した頭を冷静にしなきゃ、って。

背中で和真の怒っている声が聞こえた。

「芽衣、待って!」っていう声も聞こえた。

でも振り返れない。

こんなに走ったことないって言うくらい走って、走って。


二人から逃げて。


息ができなくなって。


苦しくなって。



目の前が真っ暗になった。







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