コインの約束
◎ 光の先に見えたもの
私は暗く長いトンネルの中にいた。
ここは、どこなの?出口はどこ?
なぜこんなに悲しいの?
ああ、思い出した。
みーくんとまーくんにお別れをしたんだ。
お母さんから手術をするからもう二人には会えないんだよ、って言われて。
さよならをしてね、って言われて。
もうすぐ中学生になるお兄ちゃんの、みーくん。
私と同じくらいの背の高さで、「芽衣ちゃん」と言っていつも私にくっついていた、まーくん。
お別れの日、まーくんがずっと泣いていて。
それにつられて私も大泣きして。
「元気になったら、お嫁さんになる」って約束したんだった。
その言葉はまーくんに向けて。
私は早く元気になってまーくんに会いに行かなければいけないんだ。
遠くから私を呼ぶ声が聞こえる。
私を呼ぶ人の、そこへ行かなければいけない。
まーくん、どこにいるの?
まーくん、私、元気になったよ。
まーくん、会いたいよ。
「まー、く、ん」
眩しい光が見えた。やっと長いトンネルから抜け出すことができた。
私を見ているこの人は、誰?
まーくんじゃ、ない。
私を「芽衣」と呼ぶ、この人は?
私はお父さんとお母さんを見て、安心して。
「まーくんは、どこ?」
そう聞いて、また瞼を閉じた。