コインの約束

芽衣の両親はそんな俺を見て、まーくんの方が倒れてしまうんじゃないかと、心配までしてくれた。

俺があの時のまーくんだって、すぐに気づいてくれたんだ。

俺は嬉しかったよ。



『まー、く、ん』


それは突然だった。芽衣が俺を呼んだんだ。
目を薄く開けて、俺を見た。

「芽衣!芽衣!!気が付いたのか?」

俺はナースコールをして、急いで看護師を呼んだ。

看護師が俺を見て

「もう大丈夫よ、和真くん。だから泣いてちゃダメでしょ」

俺は泣いていることにその時初めて気が付いた。

その場に立っていることができずに、病室の床に座り込んで芽衣を、芽衣だけを見つめていた。

芽衣の両親が病室に到着すると、芽衣は両親をすぐに認識した。

記憶は飛んでいないようだった。

良かった。本当に良かった。

芽衣が母親に、

「まーくんは、どこ?」

と、聞いた。

俺の事を”まーくん“と呼ぶことに違和感を感じた。



そして芽衣はまた意識を手放した。


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