コインの約束
「芽衣、もうここには来なくていいから」
「えっ?和真、何言ってるの?」
「親父から聞いたんだろ?俺のことはもういいから」
「和真、私は和真の側にいたいの。どうして、ダメなの?」
「芽衣を見ているのが辛いんだよ。俺はもう芽衣を守ってあげられない。芽衣を笑顔にはできない。芽衣の未来から俺を消してくれ」
「何を言ってるのか分かってる?どうして私の未来から和真を消さなきゃならないの?ずっと和真の隣に居たいって言ってるじゃない」
「芽衣、ごめん。もう帰って」
「イヤだ。帰らないよ。和真が苦しんでいるのに、どうして私が和真から離れられる?」
和真は私から顔を背けて寝返りできない体を少しだけ動かした。
「痛ってぇ。分かるか、芽衣。少し動いただけで激痛が走るんだよ。それでも上半身はいい。まだ痛みを感じられる。でも俺の足は痛くないんだよ。ボルトを入れられてるってのに、なにも感じないんだよ」
「昨日手術したばっかりだよ。そんなすぐに治るわけないでしょ。リハビリできるようになったら、一緒に頑張ろうよ。和真ならでき・・・」
「そう言うの、やめてくれよ!どう頑張るんだよ。もう足の感覚がないんだ。リハビリだってできないんだよ」
和真は大声で怒鳴った。
私は少しひるんだけど、そんな風に言われるなんて想定内だよ、和真。
「そうやって私に当たればいい。言いたいこと言えばいい。私はすべて受け止める。和真のすべてを受け止めるから」
「簡単なことじゃ、ないんだよ・・・」
「うん、簡単じゃないことは分かってる。それでも一緒に前を向くの」
「芽衣、お願いだから・・・・。もうこれ以上」
「和真に嫌われたって、私はここにいる。嫌いになってもらってもいい。強い和真も弱い和真も全部私の好きな和真なの。和真と一緒にいたいの」