コインの約束

私と湊は中庭の日陰になっているベンチに座り、お弁当を広げた。

「やっぱ外は暑いな。日本の夏をなめたら死ぬぞ」

「何言ってんの、湊。いつも炎天下の中でサッカーやってるじゃない。これくらい平気でしょ?」

「俺はナイーブにできてんの、芽衣と違って」

「なんだと、湊!私の方が湊より100倍ナイーブだ!」

そんな不毛な言い合いも、いつも通りで心地いい。

「はい、卵焼き。今日はだし巻きだよ」

「俺、甘いのがいい」

「じゃ、あげなーい」

「無理!もらう」

そう言って私が箸で掴んだ卵焼きに口を近づけて「パクっ」と食べる湊。

「ん、うまい」

そんな湊を見て、私はふふっと微笑んだ。

そんな私の顔をじっと見つめてくる湊。

「なぁ、芽衣。アイツのこと、好きなのか?」

「さっきから湊の言うアイツって、和真のことなんだよね?」

「ん」

「和真は、助けてもらった人で。それだけだよ。他に何があるの?」

そう湊に言ったけど、心臓はドキドキしてて。

「じゃ、俺は?芽衣にとっての俺って、どんな存在なの?」

「とっても大好きな友達。いや、親友かな」

「そっか、親友か」

「うん。本当に大切な親友だよ。もしさ、湊に彼女ができたとしても、私は湊と親友でいたい。そんなのは、無理なのかな」


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