いけません、凪様
 授業が終わると友里に心配された。

 ちなみに友里は親がIT企業の社長らしくて、言うまでもなくお金持ち。
 入学式の日、一人でいた私に真っ先に声をかけてくれて、気づけば一番仲のいい友達になっていた。

 そんな友里にも、凪様に告白されたと言うのは恥ずかしかったので、先程言われたことだけを話す。


「私も凪先輩にそんなこと言われたいなぁ」


 友里が羨ましそうに言う。
 なら、私と立場に変わってほしい。


「でも凪様に迷惑かけたくないから、今まで言ってこなかったのに。これじゃ、なんのために今まで……」


 そこで友里はため息をつく。
 凪様といい、友里といい、なんでこんなにもため息をつくんだろう。


「凪先輩は美波のこと心配なんでしょ。その感じだと、学校でのこととかあんまり話してないんだろうし」

「だって、私のために凪様の時間を費やさせるわけにはいかないし」


 そう言うと、友里はさっきより大きくため息をつく。


「朝も昼休みも放課後も美波と一緒にいたがるってことは、それだけ凪先輩は美波のこと大切なんだと思うよ。だから、自分のこと少しだけでも話してみたら? きっと先輩喜ぶと思うよ」


 「主を喜ばせるのもメイドの仕事だよ」と友里が冗談めいたように言う。

 確かに友里の言う通りかもしれない。
 でも、自分の話と言っても、何を話せばいいんだろう?

 そう考えていると、休み時間の終わりを告げる鐘がなる。
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