いけません、凪様
 ふかふかなシミ一つない白い布団の中で気持ちよさそうに寝息をたてて寝ているのが凪様だ。

 凪様は伊織様に似て、とても端正な顔立ちをしていて、特に目元がよく似ている。
 私は決して美人とは言えるような顔立ちをしていないので、こんな整った容姿をしている凪様が羨ましい。

 と、こんなこと思ってる暇はない。
 凪様のことを起こさないと。


「凪様、お目覚めになってください」


 寝起きの悪い凪様がこんなことで起きるはずがないと思いながら、一度声をかける。
 案の定、凪様は起きてくれない。だから、今度はもう少し声を張って、さっきと同じ言葉を言う。

 けれど、やっぱり凪様は起きてくれない。
 なので今度は軽く凪様の体を揺すりながら起こす。


「んー……」


 と目を瞑ったまま凪様が唸る。
 さっきよりもう少し強く体を揺する。


「早くお目覚めにならないと、学校に遅れてしまいますよ」


 凪様が長いまつ毛に縁取られた切れ長な目をゆっくりと開ける。
 でも、まだちゃんと意識が覚醒していないのか、ぼーっとしている。

 私が真宮家で雇われてから四年経つけど、朝が弱いところはその頃から変わらない。


「おはようございます。凪様」

「……ん。おはよう、美波」


 体を起こし、眠そうに目を擦りながら凪様が言う。

 その後、まだ眠そうにしている凪様を着替えさせ、ご飯を食べさせ、凪様と一緒に学校へ向かった。
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