丸重城の人々~後編~
大翔「柚の手、離せよ…!」
大翔の怒りに満ちた表情。

玄「お前、信貴?何やってんの?
しかも、姫と指切りって……!」
玄が信貴の存在に気づき言った。
信貴「あ、オーナー。
柚希ちゃんと病気克服の約束してたんですよ!」
信貴が小指を絡めたまま答えた。

柚希「大翔、ほんとだよ!
私ね、早く病気克服してみんなの負担を減らしたいの。だから━━━━━━」
その時、物凄い力で信貴と指を絡めていない方の腕を掴まれ、引き寄せられた。

気づくと、中也の腕の中にいた。
中也「だからって、勝手に触るな!!」
中也は信貴を睨みつけながら言った。

響子「中?」
玄「中也?」
みんな呆気にとられている。
柚希「え……中也…くん…?」
中也「柚希…」

大翔「中也!!!」
その空気を引き裂くように、大翔の声が響く。
中也「あ…ごめん!」
バッと離す、中也。
柚希「う、ううん。中也くん?」
中也「なんでこんな奴と、指切りなんかすんの……?
俺は、柚希に触れることさえもできないのに……」
中也のせつない呟き。
柚希だけには、聞こえていた。

大翔「柚!!おいで?」
大翔が両手を広げて待っている。
柚希「中也くん、ごめんね…」
そう言って、大翔の方へ駆けて行った柚希だった。

大翔「やっと戻ってきた。
なんで、俺を嫉妬させるようなことばっかすんの?」
大翔は力一杯柚希を抱き締めた。
柚希「そんなつもりないよ……」

大翔「柚、克服しなくていいよ!」

柚希「え━━━?」
弾かれたように、大翔を見上げる柚希。
大翔「こんな嫉妬させられる位なら、病気のままでいてよ!俺がずーっと、囲って守ってやる!」
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