丸重城の人々~後編~
響子「━━━━━で?英里はどうしたいの?」

英里「それは…」

広子「会いたいんでしょ?」

英里「え?」

柚希「そんな顔…してるよ?英里さん」


英里「会いたい。
ほんとに、それこそ……運命みたいに思ってたくらい大好きだったから……!」

柚希「だよね!」

英里「でも……あの地獄は……」


響子「英里。
…………私はいつでも英里の味方よ。
英里が糸口さんを信じるなら、私も信じる。
自分の気持ちを大切にしてあげて?」

英里「え?響子…」

響子「この言葉。
柚希が私に昔言ってくれた言葉なの」

英里「え?柚希が?」

柚希「フフ…」

響子「私もね。
将大に散々遊ばれて、裏切れたの。
でも、ずっと将大のこと忘れられなくて……
将大のこと、命懸けれるくらい大好きだったから。
将大が、会いに来て言った。
“もう一度チャンスをくれ”って。
冗談じゃないって思った。
でも、それ以上に“会いたい”って思った。
━━━━━━そしたら、柚希が言ってくれたの」

柚希「英里さん。
もう一度だけ、信じてみよ?
私達がいるよ?
もし、万が一……また裏切れても、私達がいる!
大丈夫。
英里さんは一人じゃない!
大好きな英里さんの大好きな人のこと、私達も信じる!」

広子「次、裏切れたら……私と宗一郎が、そいつを地獄に落としてやるわ!
英里ちゃんは、私と宗一郎の娘だから!」

英里「みんな……
ありがとう……!」

柚希「広子さん、地獄はダメですよ!(笑)」

広子「何言ってんの!
絶対、許さないわ!」

響子「まぁ、そうね!
柚希はいいと思ってんの?
英里が裏切られても」

柚希「嫌よ!当たり前だよ!」

英里「フフ…ありがとう!」



そして後日英里は、音弥に連絡をかけてカフェで会うことにしたのだ。

音弥「英里ちゃん!」

英里がカフェに向かうと、音弥が待っていて英里の存在を認めると満面の笑みで手を振ってきた。

英里「━━━━」

あの時と……大好きだったあの時と、何も変わらない音弥がいた。

最低なクズ。
でも笑顔が可愛くて、甘えん坊で、優しくて、穏やかな人。

本当に、大好きだったのだ━━━━━━


英里「……っ…」
英里は、涙が溢れていた。
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