花の妖精は秘密が多い
「みんなが無事でよかった」

私はそう微笑み、雨が降り頻る中バスの外へ飛び出す。力を使ってしまった以上、ここにはいられない。

あふれる涙を拭いながら、私は山道を走っていった。



泣きながら走っているため、息がすぐに乱れていく。身体中が雨で濡れて冷たい。春なのにとても寒くて震えてしまう。

「また恋、叶わなかったなぁ……」

足を止め、泣きながら言う。自分が望んでしたことなのにこんなにも泣いてしまうなんて、本当に情けない。悲しくて、胸が痛くて……。

普通の女の子に生まれたかった。こんな力なんて、ほしくなかった。ただ隠さなきゃいけないこんな力なんて、ほしくなかった。

考えれば考えるほど、涙が止まらなくなっていく。山道はまだまだ続いている。一人ぼっちでまだ歩いて行かなくちゃいけないんだ……。

刹那、ふわりと背後から優しく抱き締められた。雨音が一瞬にして消える。代わりに耳に聞こえたのは、「待って」という桜河くんの声だった。息が乱れていて、ここまで走ってきてくれたんだとわかる。
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