運命なんて信じない
明け方だというのに、母さんは起きていた。

「お帰りなさい」
「ただいま」

俺はリビングのソファーに座り、母さんを見る。

「何?」
「いや、あの・・・琴子のことだけど」
「何?」
母さんの表情が険しくなった。

「ゴメン。琴子を泣かせてしまった。家から出て行くかも知れない。すべて、俺のせいだから」

「琴子ちゃんは今どこにいるの?」
母さんが詰め寄ってきた。

「もう少しだけ時間が欲しい」
俺は頭を下げた。

しかし、
「嫌よ。娘がいなくなっても探すななんておかしいでしょう。一体何をしたの?」
母さんは激怒した。

「気持ちを、琴子の気持ちを傷つけてしまった。俺は琴子を妹とは思えないと」

パンッ。
頬を、叩かれた。

母さんをこんなに怒らせたのは初めてだ。
騒ぎを聞きつけた親父まで起きてきて、我が家のリビングは騒然となる。
それから時間をかけて話し合い、1週間だけ黙っていてくれと頼み込んだ。
2人とも納得してはいないが、とりあえず時間はもらえた。
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