運命なんて信じない
部屋を出た俺はまっすぐ帰る気にもなれず、ホテルのラウンジに戻った。

「何で来たんだよ」
不機嫌そうな顔をする陸仁にかまうことなく、カウンターに並んで座った。

「本当に馬鹿だな」
しみじみと言われて、
「分かってる」
ふて腐れて答える。

言われなくたって、そんなことは自分が一番よく分かっている。

「このままじゃ、おじさんもおばさんも黙ってないぞ」
「ああ。何とかする」

いつもより速いピッチで、グラスが空いていく。

「あの部屋は1週間ほど押さえてあるから」
「ありがとう」

さすが陸仁。抜かりがない。
しかし、親父達を黙らせるのも1週間が限界だ。

明け方まで陸仁と飲んで、俺は自宅へと向かった。
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