運命なんて信じない
シャワーを浴びて着替えをし部屋に出ると、賢介さんに抱きしめられた。

「こんなに小さくなって・・」
言葉に詰まる賢介さん。

私も賢介さんの背中に手を回した。

「素直でいいね」
耳元で言われ、赤くなる。

この一週間の寝不足と鬱積した思いからの解放で、体の力が抜けてフーッと気が遠くなった。


きっと、一瞬の出来事だったと思う。
気がつくとベットの上に寝かされていた。

「食べられる?」
ルームサービスで注文した温かいスープを差し出され、
「うん」
私はスプーンを口に運ぶ。

一口・・・二口・・・
うーん、美味しい。

「何か欲しいものはない?」
いつの優しい賢介さんの顔。

ふふふ。

「何?」
不思議そうに私を見ている。

ふふふ。
それでも答えずに笑っていると、

「今なら何でも用意するよ」
いつも以上に優しい声。

私は、持っていたスープをサイドテーブルに置くと、トントンとベットを叩いた。

「え?」
賢介さんが驚いている。

「側に来て」
「琴子?」

ベットに並び肩に手を回す賢介さんに、私はそっと寄りかかった。
こんなにも、側にいたいと思った人は誰もいなかった。
もう片時も離れたくはない。

「こんな事、誰に教わった?」
意地悪な声に、今度は私が絶句する。

私達はそのまま、ベットへと倒れ込んだ。
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