運命なんて信じない
翌日。
私も賢介さんも、昼過ぎになってやっと起き上がった。
ただでさえ弱った体に賢介さんは容赦がなかった。
『お仕置きだ』と言わんばかりに、私の制止など聞いてはくれなかった。

「痛たっ」
ベットを降り歩き出した途端、つい口を出た。

おかしそうに笑う賢介さん。

その時、
ブブブ ブブブ
メールが来た。

表示された名前は『平石陸仁』
咄嗟に隠そうとして、賢介さんに携帯を奪われた。

ピッキッ。
賢介さんの頬が引きつっている。

うわ、マズッ。

「まだ、たらない?」
と、近づく賢介さん。

後ずさりする私。

「やめてっ、もう、無理」
つい、涙が滲む。

「馬鹿、泣くな」
優しい声で、そっと抱きしめられた。

どうやら、からかわれたらしい。


私は今、いつも優しい賢介さんの本性を見ているのかも知れない。
普段よりちょっと俺様で意地悪だけど、私だけに見せる素顔だと思うとなんだか嬉しい。
そして、私はもう彼から離れられないと気付いた。
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