運命なんて信じない

翼と別れた後、私は久しぶりに電車に乗った。
昔、会社に勤めていた頃には、毎日麗と電車通勤をしていた。
満員電車に揺られて大変な事もあったけれど、麗と過ごす時間は楽しかった。

電車なんて、本当に久しぶり。
午後8時を回って比較的席も空いている車内で、私は1人電車に揺られる。
久しぶりに飲んだお酒のせいで、ちょっと気持ちよくなってきた。

うーん。なんだか眠い。
でも、早く帰らないと。
遥はお母様にお願いしてきたけれど、私がいないと寝られない子だし、賢介さんにも黙って出てきた。
いくら残業の予定だからって、帰って私がいないと心配するはず。
こんなことなら、「遥を心配して仕事を切り上げさせても悪いから、私が外出することは黙っていてください」なんてお母様にお願いしなければよかった。
困ったなあ。どうしよう。

そんなことを頭の中で巡らせながら、私はいつしかウトウトと眠っていた。
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