運命なんて信じない
そもそも地方から出て来たばかり私が麗と知り合ったのは、1ヶ月ほど前の研修初日のこと。
綺麗にお化粧した麗と、ノーメイクで出社した私が呼び出されたのがきっかけだった。

「藤沢さん、もう学生ではないんだから最低限のお化粧はビジネスマナーよ。立花さんも、ここは遊びの場ではないんだから派手な化粧は困るわ。2人とも、社会人としての節度をわきまえなさい」
私と麗を睨みながら、説教気味に言う指導担当の先輩の言葉。

確かに、研修だからとすっぴんで出社した私には非があると思う。
でも、麗の化粧はそんなに派手なわけではなかった。
どちらかと言えば、ハッキリした顔立ちのせいでそう見えているだけのような気もした。

「すみませんでした」
私も麗も、そろって頭を下げる。

きっと言いたいこともあるだろうに、麗は何も言わない。
横にいる私の方が不満に思っていると、
「お嬢さんだからって、何でも許されると思わないで」
小さな声で呟かれた先輩の言葉で、麗が黙った理由が分かった。

なるほど、これは妬みか。
その日から、私と麗は親しくなった。
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