運命なんて信じない
美優さんとは別れ、大地さんの運転する車で二人きりになった車内。
車の揺れのせいか酔いはドンドン回っていく。

「琴子さん、大丈夫?」
大地さんが運転席から声をかける。

「なんだか気持ち悪くなってきました。今どのあたりですか?」

「もうすぐ駅を通過するところだよ。本当に大丈夫?どこかで少し休もうか?」
親切そうに言ってくれる大地さん。

「あ、このお店は私が好きなブランドが入っているんです」
「そうか、じゃあ今度一緒に行こう」
それとなく地名や店名を織り交ぜながら、私は大地さんと会話をした。

それから15分ほど。
家はどこかと聞かれることもなく車は走り続け、気が付けば薄暗い駐車場に止まった。

「さあ、着いたよ。少し休んで帰ろう」
「ホテル、ペーパームーン?」

いかにもラブホテルって感じの名前を私は口にした。

「琴子ちゃん一人では歩けないだろうから、僕の肩に捕まって」
「いえ、一人で・・・」
さすがに距離をとろうとする私を、大地さんが担ぐようにして車から降ろす。
このままではマズイ。私は大地さんに連れ去られてしまうと思ったその時、

「待てよ」
駐車場の入口から聞き慣れた翼の声がした。
< 44 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop