運命なんて信じない
『賢介さんからうちに父に抗議があって、縁談も白紙に戻したいって言われたわ。琴子さんはただの同居人だって言ったのに、嘘だったのね』

「そんな」
私は何も知らない。

『二度と琴子さんに近づくなって脅されたのよ。もし琴子さんがただの同居人だって言うなら、賢介さんがこんなことを言うのはおかしいじゃない』
「でも、私は本当にただの同居人で・・・」

いくら言っても今の美優さんには通じないんだろうなとは感じたけれど、他に言いようがなくて同じ言葉を繰り返すしかない。

『それが真実だっていうなら、琴子さんが平石家にいるべきではないと思うわ。あなたがいる事で、賢介さんの気持ちも乱れるし、縁談だって上手くいかない。私と賢介さんの縁談には家同士の利害関係があるの。ただの恋愛とは違うのよ』

こんな風に言われると、私がここにいてはいけない気がしてくる。
帰す言葉がなくなった私は、返事をしなかった。

『お願いだから、1度離れてみてください。琴子さんお願い』
涙声で訴えながら、美優さんは電話を切った。

何だろう、この罪悪感。
私がいる事で迷惑が掛かっているような、罪の意識。
決して望んだ事でもないのに、私が悪いような気がしてきた。
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