運命なんて信じない
このまま田中が諦めてくれるかもしれないと、私も期待した。
翼と田中はにらみ合いを続けた。
本当は解決のために多少のお金を払っても仕方がないかと思っていた。
しかし、こういう奴らは一度払えば必ず次も現れるからと翼に言われ、私は翼にすべてを託した。
うまくいけばすべてが解決するし、難航すれば賢介さんに助けを求めることになるかもしれない。
もちろんそうならないように努力はするが、このままずるずると長引くのが一番悪いからそうならないためにも覚悟だけはしておいてくれと言われている。

ガチャンッ
翼と田中のにらみ合いが続いた後、突然グラスの割れる音がした。

割れたグラスの底を持ちながら、尖ったガラス片を翼に向ける田中。

「そういうことなら道ずれだ。とことん大ごとにして、琴子のあしながおじさんとやらに金を貰おうじゃないか」

「何バカなことを言っているのよ」
私は大きな声を上げた。
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